そして二人だけになった

これはは良作!!
amazonのレビューは低いけど、個人的には好き!

オチについては賛否両論あるが、思わず読みなおしてみたくなる最後。
そして読みなおすと色々とつじつまが合って面白い!

ニコニコ用語でいうと「もっと評価されるべき」一冊!

以下ネタバレ含みます。




「そして二人だけになった」にはネタ明かしが2回ある。

ひとつめは「バルブは2箇所あり、違う場所で同じ事件を再現していた」というもの。

ふたつめは「森島有佳は始めから存在せず、バルブにいたのは5名だった」というもの。


オチとしては1つ目のものは簡単に納得できる。
Aのバルブでは(本物の)勅使河原が犯人、Bのバルブでは(本物の)森島友佳が犯人。
本文も勅使河原、森島の一人称で交互に書かれているが
同じ場所の出来事ではなく、実は別々の場所の出来事だった。。。
読者の先入観による同一場所と思いこませるトリック。。。

これは受け入れられる。
受け入れられるが、実現可能かどうかで判断するとかなり厳しい。
異なった場所で全く同じ殺人を、ほぼ同時刻に再現しなくてはいけない。
電話でやり取りしてたとしても、人間が6人いる以上、
そんなに思い通りに皆が動いてくれるわけではない。
ましてや同じように人が死んでくれるものでもない。



そして、どんでん返しともいえる2回めのネタ明かし。
一緒にいた森島有佳、本物の勅使河原、本物の森島友佳、これらは存在せず
すべて自称弟の勅使河原の多重人格だった。。。

読んでいて頭がこんがらかった。
さっぱり意味がわからない
まったく納得出来ない

今までのストーリーで明らかに森島友佳は存在している。
それらをすべて否定して、多重人格?妄想?
こんなもので片付けてしまうのか??
勅使河原と森島が脳内で会話できるのはいいとして
他の人間が森島有佳に向かって話しをしているのはどういうことなのか。

あまりにも納得行かない。
なので読み返してみた。




そしたら納得した!!

(勅使河原を除く)誰も森島有佳に話しかけていなかったΣ(゚Д゚)!!!!

いや、物語上、森島有佳に話したように書かれてはいるが
それは勅使河原の思い込みであって、
実際は森島有佳ではなく、みんな勅使河原に話しかけていたのだ。


いくつかシーンを抜粋してみよう。
第2章の森島有佳のパート。

小松「ほら、勅使河原さんにはさ、若く美しく最強の、秘書さんがいるんですよ」
「あら、でも、今回は・・・」浜野はそこまで言って、言葉を切った。
浜野静子は何が言いたかったのだろう?今回は部屋が全てシングルだ、とでもいうつもりだったのだろうか。


ここで浜野が言おうとしたのは、当然そんなことではなく
「秘書が来ていない」ということだ。
周りから見たら、勅使河原一人で来ているのだから当然である。



森島有佳の会話の部分を勅使河原に置き換えてみると分かりやすい。

森島「血液型にご関心が?」
浜野「職業柄多少は。でも一番悪いところは・・・」
浜野「視力かな?」
森島「気を使っていただいて、ありがとう。」
森島「でも、みえないこともありませんよ」
浜野「それは 微妙な発言ね」


勅使河原「血液型にご関心が?」
浜野「職業柄多少は。でも一番悪いところは・・・」
浜野「視力かな?」
勅使河原「気を使っていただいて、ありがとう。」
勅使河原「でも、みえないこともありませんよ」
浜野「それは 微妙な発言ね」


こちらのほうが意味が通じる。
目が見えないはずの勅使河原が、「見えないこともない」
と言ってしまっているのだから、そりゃ微妙な発言だ。


第三章の森島パート
カメラの映像をみんなで確認しているシーン

垣本「それでは作業を再開しよう。ちょっとそこの席を変わってくれないかね」
勅使河原「ええ、すみません」
勅使河原潤は立ち上がり、モニタの前に垣本を座った。
小松「やれやれ・・・」
小松教授はそう言ったが、どういうつもりだったのかよく分からない。

このシーンは物語上、モニタの前の椅子に
勅使河原、森島、小松が座っている。
そこに垣本が席を空けるように要求。
勅使河原が席を立ち、そこに垣本が座った。

しかし実際は、モニタの前の椅子は
空席、森島(勅使河原)、小松
である。
垣本は空席に座り、森島が座っている真ん中の席を空けるように要求したのだ。
しかし、立ち上がらない森島。
そこで小松が「やれやれ」と溜息をついた。



このように勅使河原から森島への置換えで
辻褄が合うように幾つものシーンが描かれている。

しかし、辻褄が合えば合うほど違和感もある。

例えば、言葉遣い。
周りからみたら、森島有佳の言葉は
勅使河原潤がしゃべっていることになっている。
本人は森島有佳のつもりで女言葉をしゃべっていても
周りはとても反応に困ってしまう。

一人称の「私」は男性でも女性でも問題はない。
死体発見時のアクションも「きゃー」とかでなく「誰か来てください!!」なので問題ない。
すべてのセリフがどっちとも取れる発言しかしていない。

つまり、言葉を選びすぎている。
通常の会話では、そうはいかないだろう。
明らかに後から人物を置き換えられるように言葉が選ばれている。
それは当然、登場人物が言葉を選んでいるのではなく
トリックのために作者が言葉を選んでいることになる。
物語の外側の要因により、どっちとも取れる発言しかしないキャラというのは
違和感があるし、また興冷めしてしまう。



また、都合の悪いシーンもすべてカットされている。
最初の6人が集まっての自己紹介のシーンも、
なんらかの理由をつけて自己紹介しないことになった。
ここで自己紹介していたら、すぐに誰かから突っ込みが入っただろう。


他にも細かいおかしなところもあるが、まぁだいたい納得できた。


「そして二人だけになった」は基本的に勅使河原パート、森島パートで交互に構成されている。
これらは時系列でかかれてあり別角度から見られているパートがない。
つまり、勅使河原と森島が別々のところに居たことになっていた場合でも
同時刻のそれぞれのパートは決して書かれていない。
勅使河原パート→森島パート→勅使河原パートとすべて時系列である。
なぜなら、一人だから。




さて森島有佳に手を引かれて歩いている状況は周りにはどう映っていたのだろう。
エピローグで少女に手を引かれているシーンは、白熊のぬいぐるみだった。
バルブ内では何を持っていたのだろうか??


最後に、
タイトル「そして二人だけになった」はバルブ内に二人だけになったのではなく
勅使河原の多重人格が二人だけになったのである。




関連記事

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。